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第二話① 白鳥一家との出会い

Penulis: 三木猫
last update Terakhir Diperbarui: 2025-11-02 12:35:34

「美鈴ーっ、出掛けるわよーっ」

玄関から名前を呼ばれ私は急いでお出かけの準備をする。

今日は日曜日。前々からこの日はママと二人で遊びに行くと約束していた。

その為にママは多少無理をして仕事を終わらせてくれた。

正直中身が現世の年齢を加算して三十オーバー女としては【そこまで無理しなくてもいいのに】と自分の母親に対して姉のような気持ちになってしまうのだが。

ママは26歳。前世の私の年齢より若いのだ。まだ遊ぼうと思えば遊べる年なのに…。

とは言え今日は私の六歳の誕生日。

ママがこうやって休みを取ってくれて、遊びに連れて行ってくれる事自体は素直にとても嬉しいのだ。

体が幼いと、心も幼くなるのかな?

どこかうきうきと浮かれてる自分もいるのだから、どうしようもないなと思う。

「美鈴ーっ?」

ぼんやり考えていると、今度は少し心配そうな声で名を呼ばれて、私は慌てて返事をした。

白のワンピースに大きな麦わら帽子。それと愛用のピンク色の鞄にハンカチ、ティッシュ、もしもの時の絆創膏と水の入ったミニサイズのペットボトルを入れて私は部屋を出てママが待つ玄関へと走った。

そんな私をママは満面の笑みで迎えてくれて、頭を撫でてくれる。

ふわあ…ママ、綺麗…。

何時も締め切り間際のボロボロ姿を見慣れてしまったせいか、ママのちゃんとした姿は女の私でも眼福である。

ストレートの金髪に似合う白い大きな帽子。そして私とお揃いの白のワンピース。私のは膝丈だけど、ママのはロング丈。

「ママ、きれいだね」

私は素直にママに賛辞を送ると、

「美鈴も可愛いわ」

ぎゅっと抱きしめてくれた。

んふふ。幸せ。

「わたし、ママ、だいすきっ」

「ママも美鈴の事大好きよ」

二人顔を見合わせふふっと微笑み合う。

ママに手伝ってもらい靴を履くと、差し出された手をとり私達は家を出た。

仲良く歩道を歩く道すがら、私はママに幼稚園での出来事を話す。

それをママは優しくうんうんと頷いて聞いてくれる。それはそれは優しい笑顔で。

…ママは美人だ。

乙女ゲームの主人公の母親だから当然と言えば当然かもしれないけど、でも、この視線は酷い。

擦れ違う男と言う男、全員がママを見て、振り返り、厭らしい目でママを見てくる。

前世の所為で、こういう目に私は酷く敏感だ。

(…ママをどっかに連れ込んだりしたら、絶対絶対許さないんだからっ!!)

ぎゅっと握った手の力を強めると、ママは不思議そうに小首を傾げた。

そんなママの姿は可愛い。可愛いんだけどぉー……はぁ。

「ママ、わたしとはぐれたら、だめだよ?」

「あら?ふふっ、分かったわ。美鈴もママから離れたら駄目よ?」

「うんっ、ぜったいはなれないよっ」

意地でも離すもんかっ。

ママは私とずっとずーっと一緒にいて貰うんだからっ!!

再婚をさせない代わりに、私がずっと一緒にいるからねっ!!何歳になっても一緒にいるからねっ!!

色目を使ってくる男達に【ママは子連れですよー】【旦那さんもいるんですよー】なオーラを醸し出しつつ歩を強め、そうこうしている内に、私達は目的地である近所の大型スーパーに到着した。

「ねぇ、美鈴?本当にここで良かったの?どうせなら動物園とか水族館とか、遊園地とかでも」

不安そうにママが聞いてくる。

そりゃそうだ。普通六歳児が誕生日祝いに近所のスーパーに行きたいなんて言わないだろう。

でも、メジャーな子連れスポットなんて、カップルが絶対多そうな、男がわんさかいそうなスポットに何て行きたくない。

こんなスーパーですら結構な人数の男がいるのだ。ましてママのこの容姿。絶対ホイホイされる。

実際、さっきから私とママの手を見つつもママを気にしている男性がチラホラいる。

ママが私と手を繋いでいなければ、ママ目当ての男がもっと寄って来て、きっと私は脇目もふらず回れ右して全力逃走してしまいそうだし。

「ここがいいの。ここならママもおかいものできて、いっせきにちょう、でしょ?」

「もう、美鈴ったら。本当に賢い子ね。それにとっても優しい子だわ」

ママが微笑む。それにつられて私も微笑む。

「そうと決まったら、お買い物しましょうっ。美鈴の新しい服も欲しいし、ケーキも買わないとねっ。美鈴は何が欲しい?」

「じてんがほしいっ」

「辞典?何の?」

「ドイツごっ!!」

元気よく手を上げて応える。

実は前世の私は勉強という物が嫌いではなく、むしろ好きだった。こう、知識が頭に吸収される感覚が好きなのだ。

お蔭で小学校から大学まで常に成績はトップをキープ。一般的な科目はほぼほぼ満点でクリアしている。

前世で大学は理数系を選択したので、今度は文系を極めてみたい。

そう思って言ったのだが、ママはそれはもう驚き、綺麗な瞳を真ん丸くさせていた。

あれ?辞書、もしかして駄目?

「ママ…?だめ?」

「えっ?い、いいえっ。駄目と言う事はないの。でも…まだ早いんじゃ…?」

やっぱり可笑しいか。普通なら絵本とか言う所だろうし…。

でも、今更絵本何て読んで何が楽しいのさ。

どうせ買ってもらうなら、辞典の方が為になる。

「…だめ?」

ちょっとあざといかな?と思いつつもうるうると目を潤ませてじっとママを見詰めると、ママは首を大きく振った。

「いいわ。今日は美鈴の誕生日ですものっ!好きな物を買ってあげるわっ」

そう言ってママは私の手を引いて歩きだす。

「……一石二鳥とか、ドイツ語といい…私の娘、もしかして天才なんじゃ…?そのうえ可愛いなんて、どうしよう…。絶対男に狙われるわ」

ママが小さい声で何か呟いていたけれど、怖い言葉も入ってたから私は聞かなかったことにした。

流石大型スーパー。普通のスーパーとは違い複数のテナントが中に入っており、その中には当然本屋も並んでいた。

本屋の隣に子供服専門の店もあり、私が欲しい本を選んでいる間、ママは隣の服屋を覗いてくることになった。

本屋から出ない事を約束して、私は久しぶりの本屋をじっくりと見て回る事にする。

あぁ、出来れば各国の言語が載ってる参考書とか、問題集とか欲しいなぁ…。

漫画とか乙女ゲームとかでも良かったかもなんだけど、それはもう少し大きくなるまで我慢かなー。

大きくなればPCを入手出来る様になるだろうし、そうすれば色々ネット注文とかで外出しなくても良くなるし。何にしてもアルバイト出来るようになるまでの我慢だね。

そう言えば本棚の並び見てて思い出したんだけど、そもそも私がBLに嵌った理由ってその売場だけ男の人がいなかったって事なんだよね。男を避けて避けて見て回ってたらここに辿り着いたんだ。

まぁ、完全にいない訳じゃなかったけど、そう言う場所にいる男の人は大抵は心が女性だったり、周囲を気にしない人だったりしたから傍によりさえしなければ大丈夫だったんだよね。

現世ではどんなBL売ってるのか気になる所だけど、この年齢で流石にBLの棚による訳にはいかないなー、えーっと、参考書の棚はどこだろー?

暫く歩いて、その場所を発見する。喜々として歩み寄るとスーパーにしては結構な品揃えだ。

「ママ、何冊位なら買ってくれるかな…」

予算としては多分ママが買ってくれようとした玩具の値段位だよね、きっと。

だとすると最高で五千円くらいかな。うん。だとすると…。

私は問題集の棚の下に立ち上から順に背表紙を眺めて行く。

前世に愛用していた参考書を出している出版社あるかな?と探すと見つかった。しかも。

あちゃー…。一番上の段のど真ん中だ。

前世の身長があったとしても、背伸びして義理届くかどうかの高さだ。

確実に今の私の身長じゃ届かない。

どこかに踏み台は…キョロキョロと周りを見渡す。あ、あった。

テテテッとそこに走り寄り、踏み台を押す。幸いタイヤが付いているので移動は楽だった。

ゴロゴロと音を立てつつ、踏み台を動かし設置すると、二段ある踏み台を登る。

……が。

「と、とどか、ないっ」

踏み台と言うドーピングをしてもギリギリ届かない。

あ、あ、でも、もうちょっと…指先に欲しい本が微かに触れる。

いける、かもっ?

ぐっと爪先に力を入れ、本を動かそうとした、その時。

「これが欲しいのか?」

背後から突然男の声が聞こえ、反射的に体が竦みあがり、バランスを崩してしまった。

「――ッ!?」

体が斜めに傾き、一瞬の浮遊感。地面に叩きつけられる恐怖と痛みに耐える覚悟を決め、ぎゅっときつく瞳を閉じ体を強張らせる。しかし。

「おっ、と、危ねぇっ」

焦ったような声が耳に響いて。

そこから待てども待てども覚悟していた受ける筈だった衝撃が来ない。

暖かい何かに包まれている。けど、目を閉じているから分からない。

すると、耳元で囁くような声が聞こえた。

「大丈夫か?悪かったな、急に話しかけて」

この、声は…―――男だっ!!

急いで目を開き状況を確認する。私はやたらと顔の整った男子高校生?に片手で抱えるように助けられていた。

う、嘘だっ、嫌だっ、嫌だっ、怖いっ!!

「どうした?どこか痛むか?」

カタカタと急に震え出した私の足を掬い上げるように腕を回し、片腕に座らせるようにしてもう一度心配気に覗き込んでくる。

けど、今の私はそれ所じゃなかった。

男に触れられている。それだけでもう怖くて堪らない。

前世の様々な記憶がフラッシュバックする。

怖くて怖くて泣きそうだ。…でも…、我慢。我慢だ私っ!

だってこの人は助けようとしてくれたんだ。だから、我慢っ。辛いけど、怖いけど。

でも助けてくれたのにお礼を言わないのは絶対おかしいから。

体の震えを何とか抑え込み私は素直に礼を言った。

「だ、いじょうぶ。ありがとう」

「そうか。ならいい。えっと」

男子高生は私を降ろして、さっき私が取ろうとしていた本を取ってくれた。

「これで良かったのか?」

手渡してくれたそれを見て私はコクリと頷く。

「誰かにお使いでも頼まれたのか?」

突然そう話を振られて私は首を傾げる。すると見た目男子高校生は苦笑いして、蘇芳色の髪を掻き上げた。ますます意味が分からなくて一歩だけ距離をとるように後ろに下がってジッとその姿を確かめた。

黒シャツに黒のパンツ。男子高生?むしろホスト?結構お高そうな服を見事に着こなしている。身長高い。170軽く超えてるよね。そのまま見上げて視線を顔に向け目線を合わせる。

この人の瞳も青だ。黒に近い藍。

私と同じ青色だけど全然違う色の瞳がすっと細められた。

「じゃあその本は何に使うんだ?」

これ?何で私に渡した本をじっとみて……あぁ、成程。そう言う事か。

彼の訝し気な目を見て私は納得した。

彼は私が何か悪戯していると思ったんだ。ちゃんと悪い事は悪いと注意するつもりで。

なんだ、この人、良い人だ。

ごめんね、ホスト何て言って。少し安堵した私は微笑んだ。

「べんきょうするの」

「へぇ、誰が?」

あ、まだ疑ってる。でも私は嘘を言ってないから平気。

「わたしが」

「ドイツ語を?」

今度こそ私は大きく頷く。

「冗談だろ?」

驚き、疑うように言われて私はもう一歩後ろへ下がって距離を置き、

『助けて頂き有難うございました。本も取って頂き有難うございます。それでは失礼します』

そう、英語で言うと微笑んでその場を後にした。

なんでドイツ語じゃないのかって?そんなのまだ解らないからに決まってる。

英語なら授業とかそれ以外でもしっかり前世で学んだからね。

「お、おいっ」

驚き、目を真ん丸にした男子高生から逃げるように遠ざかり、ママのいる所へと思ったけれど、まだ会計の済ませてない本を持って本屋を出る訳には行かない。

辞典がある場所はさっきまでいた参考書の売り場の近く。戻る訳にもいかないし…。なら一旦店員さんに本を預かって貰ってママの下へ向かおう。

決めたら即実行。

持っていた本を店員さんに預け、私は隣の服屋へ入る。

本屋と違って棚が低く、奥も透けて見える什器が使われている為、探しやすい。

すると服屋の店員とテンション高く会話してるママの姿が見え、私は急いで走り寄った…つもりだった。

急に背後から抱き上げられ、何事かと振り返るとハァハァと気持ち悪い息遣いで太った男の視線が舐めるように私を見て、そのままばれないようにと動き出す。

ここにきてまさかの誘拐っ!?嘘でしょっ!?

嫌っ!!気持ち悪いっ!!怖いっ!!

ボロボロと無意識に涙が零れだす。

死ぬほど怖いっ。でも、落ち着けっ、落ち着けっ、私。こういう時の対処法はっ、

「ママぁーーーーーーっ!!」

力の限り泣き叫ぶこと。

全力で泣き叫ぶと、ママがこっちに気付き、慌てて走り寄ってくる。店員さんも気付きこっちに来てくれる。

けれど、男の方が早かった。

だるまの様な体で走りだし、泣き叫ぶ私の口を汗で湿ったその太い手で塞ぐ。

ぎゃーっ!!気持ち悪いーっ!!

がぶっとその手を齧り顔を振って口を解放させて必死にママを呼ぶ。

「美鈴っ!!」

「ママぁーっ!!」

私の名前を呼ぶママの声がどんどん遠ざかる。

この誘拐犯、意外に足が速いっ。

せめて抵抗しないとっ!!

じたばたと暴れるが所詮子供の抵抗だ。痛くも痒くもないだろう。それに、この手の男は…。

「…あぁ、可愛い」

抵抗しても全く通用しないのである。むしろ喜んでしまう。

それがやっぱり気持ち悪くて…。

「いやぁーーーっ!!ママっ、ママぁっ!!」

このロリコン、誰でもいいから何とかしてーっ!!

私を助けてぇっ!!

スーパーの入口を抜けて、男は自分の車へと走り私を後部座席へと放り投げた。

鍵をかけずに駐車していたことから計画犯だって事が解る。今そんな事が分かった所でなんの解決にもなりはしないんだけどもっ。

男は運転席に乗り込み車を動かそうとして止まった。

自分のポケットや鞄を漁っている。

もしかして、鍵を落としてきたのか?

男は舌打ちをして、また車から出て、今来た方向へ走って行った。

どこで落としたのか見当が付いているんだろうか?解らないから来た道を戻ったのかも、だ。

って事は今なら逃げられる?

そっと、誰もいない事を確認しながらドアを開けて車から降りる。すると、コンコンと窓ガラスを叩く音が聞こえた。

キョロキョロと見回すと、隣の車に乗っている男の子が私に必死に手招きしている。白いシャツを着こなしている童話に出てくる王子様ばりに可愛い少年だ。藍の瞳に金色の髪が眩しい。

どうしようっ。男は怖いけど、男の子ならまだ我慢できる、かなっ?

背に腹は変えられない。

私は隣の車の運転席のドアを開け中へ入った。

「こっち来てっ」

その男の子に導かれるまま、後部座先へ移動する。

するとそこには私を呼んだ男の子と同じ顔をした金色の髪に緑の瞳の少年王子が外を見張っている。

「急いでっ!戻ってきちゃうよっ!」

更に奥のトランクへ。

そこで小さくなるように言われて、私は慌ててばれないように身を隠す。

その上からその子は毛布をかけてくれた。

暑いけど、誘拐されるより断然マシ。

「葵(あおい)っ、あいつ戻ってきたっ」

「こっちに気付かれないようにしてっ」

「寝てるふりでもしようっ」

話し声が止み、一気に静かになる。

すると、隣の方からバタバタと焦る足音と車のドアを開け閉めする音が響き渡る。

バレませんようにっ…。

心臓の音がバクバクと体中に響いている。

恐怖に涙が零れ、嗚咽が外に漏れないように口を必死に抑えるけど、体の震えはどうしようもない。

「…大丈夫だよ」

「うん。大丈夫。直ぐに父さんと鴇(とき)兄さんが来てくれるから」

「「だから、大丈夫」」

二人が私を安心させるように小さな声で、何度も何度も大丈夫と繰り返す。

―――バキッ、ガタンッ!!

大きな音が隣から聞こえ、ひっと耳を塞いで体を縮ませる。

暫くして、コンコンと車の窓ガラスを叩く音が聞こえた。

それと同時に、

「「鴇兄さんっ!」」

二人の声が重なった。ドアが開く音が聞こえ、外で何かしら話している声が聞こえる。

けど、怖くて震えている私にはそれも上手く聞き取る事が出来なくて、自分の呼吸音しか耳に入ってこない。

またコンコンとガラスを叩く音が聞こえた。今度はさっきよりも近くに。

そっと毛布から顔を出して音のした方をみると、トランクの扉が開けられた。

「大丈夫か?」

「ほん、やの、おにい、さん…?」

そこには優しく微笑む頼もしい姿があって。私はまたボロボロと涙を零す。

「もう大丈夫だから。ほら…」

その男子高生は私を毛布ごと包む様に抱き上げトランクから出してくれる。

「ママの所に行こうな」

「もう、大丈夫だよ」

「鴇兄さんがいれば絶対大丈夫」

止まらない涙を手でゴシゴシと擦ると、双子は背を伸ばして私の背中を撫でてくれた。

そんな双子を微笑ましそうに見ながら、本屋で会ったお兄さんは私と双子を連れてスーパーの中へと戻った。

お兄さんの足は真っ直ぐバックヤードへと向かっていた。何故?

関係者以外立ち入り禁止区域へ行くのに、その足取りは揺らぎない。従業員の休憩室らしき場所に足を踏み入れるとそこには白いワンピース姿が。

「ママっ!!」

私が叫ぶと、今まで祈る様に俯いていたママが弾かれた様に私を見て椅子を倒す勢いで立ち上がり抱き上げられている私を奪い取ってきつくきつく抱きしめた。

やっと安心出来る場所に来て、また涙が溢れだす。

「美鈴っ、美鈴っ!!」

「ママぁーっ!!」

互いにきつく抱きしめあい無事を確認しあう。

「良かったっ、良かったっ、本当にっ」

ママがそう言って私を抱きしめていると、そっと知らない男性が近寄って来た。。

いきなりの男性登場に体がびくっと震え、ぎゅっとママに抱き着く。

「無事で何よりです。犯人は私の部下が連行したので安心してください」

そう言ってママの肩を叩く。ゆっくりと二人でその声の主を確かめる為、顔を上げると、ママより頭二つ分位大きい男性が立っていた。

またしてもイケメン。年齢の所為かやたら落ち着いた風貌で、けれどその蘇芳色の髪と緑色がとても印象強いダンディなおじさま。

スーツを着てはいるけど、話し方から対応の仕方で警護とか警備関係者であろう事は何となく理解した。

ママは私を地に降ろすと、深々と腰を折った。

「本当に、有難うございました。娘を助けて頂き、本当に、本当に有難うございます」

後半の声は涙で声がかすれていた。

私も慌てて腰を折る。

すると、私は急に手を取られた。両サイドから。

「よかったね。ママと会えて」

「大丈夫だったでしょ?」

双子が微笑みながら優しい言葉をくれる。

それが嬉しくて、

「うんっ、ありがとうっ」

と満面の笑みで返すと、二人が驚いたような顔でピタリと動きを止めた。

え?なんで?

助けてくれたお礼を言っただけじゃん?

「ねぇ、君、名前は?」

「教えて?僕も知りたい」

「あ、俺も知りたい」

そこに何故かすかさず便乗した本屋のお兄さん。何故…。

助けて貰ったんだし、名前くらいなんぼでも言うけども。

「さとうみすずです」

「みすず、ね。どんな字を書くんだ?」

え?それ幼稚園児の私に聞く?

首を捻ると、尋ねてきた本屋のお兄さんはにやりと笑った。

「英語をあれだけ流調に話せて、ドイツ語を学ぼうとして参考書を手に取ったのに、自分の名前の漢字も説明が出来ないのか?」

う…。そう言われると、説明出来ないのは逆に不自然かもしれない。

私は手を繋いでくれている二人に手を離してもらい、お兄さんの手をとると、その手に指で自分の名前を漢字で書いた。

「成程。そう書くのか」

「鴇兄さん、独り占めは駄目ですよ」

「ズルいです」

そう言って二人はまた私の両サイドで手を繋いできた。

何だろう、この状況?

何で二人と手を繋ぎっぱなし?

男の子であろうとも、立派に男なので私の精神の安寧の為に出来れば解放して貰えると有難いんですが…。

お兄さんは手近にあった椅子を引き寄せ座ると、私の脇に手を入れて持ち上げ自分の膝の上に座らせた。

あ、あの、だから、男性の側は嫌なんです、けど。

さっきは非常事態だったからまだ我慢できたけど、今はだいぶ落ち着いて来て男性に近寄られると素直に体が震えるんですが。

はなして、くれませんか?

この一言が言えたらどんなにいいか。

双子はまだ手を繋いだままだし、何だこれ。

「ま、ママ…」

最終的に助けてくれるのはママしかいない。

だが、一方のママは…。

「え?あ、あの…」

「どうでしょう?考えてみてくれませんか?」

「そ、そんなこと突然言われても」

「私はチャンスを逃したくないんです。貴方が少しでも私を嫌いでないというのなら、どうか…」

「き、嫌いだなんてそんなっ」

「私と結婚を前提にお付き合いしてくださいませんか?」

…ん?

ちょ、ちょっと待って?

今聞き捨てならない言葉が私の耳に突き刺さったよ?

結婚を前提にお付き合い?

それって、まさか…。

私はママに求婚している男性の顔を見た。蘇芳色の髪、緑色の瞳。すらっとした身長に大人の色気が混ざった…って、嘘だぁっ!?

慌てて私を抱っこしている人の顔を確認する為に振り返る。そして左右に立っている双子を見る。

「~~~ッ!?」

叫び出しそうな声をごくんと飲み込んだ。

間違いないっ!この三人、攻略対象の白鳥家の三人だっ!!

思い出した瞬間にゲームの細かい設定まで思い出す。

そうだ、この男性は白鳥家の父親で後に私の義父になる人だ。私の年齢から計算すると彼は昨年奥さんに先立たれたはず。

ゲームの設定ではずっと奥さんを忘れられずにいて、ヒロインが中学に上がったある時、外で具合を悪くしたヒロインの母親を救ってくれるんだけど、そこで白鳥家の父はヒロインの母親に一目惚れして猛プッシュ。

その後再婚する事になる。しかもかなりのスピード婚。出会った一月後には、結婚し、以来ずっとラブラブな二人って説明書には書かれてた。

…筈、な、の、にっ!!なんで今出会って既にプッシュ受けてるのっ!?

ママは押しに超弱いんだよっ!?

ここで再婚なんてされでもしたら、私のご隠居生活がっ!!

慌てて私は周囲を囲ってた三人を振り払ってママに駆け寄り、そのすんなりした足にガシッと抱き着く。

「ど、どうしたの?美鈴」

「ママはわたしのなのっ!おとこのひとにはあげないのっ!」

「美鈴…」

ママは嬉しそうに私を抱き上げて、ぎゅっとしてくれた。私もお返しにぎゅっと抱きしめ返す。

「だってよ、親父」

椅子に座ったままニヤニヤと言う姿は本当に目の前の男にそっくりだ。

流石親子。

「お前達、父親に協力しようって気はないのか?」

「協力、ねぇ。それして俺に得あるのか?」

「はっ。俺が知らないと思っているのか?お前達の好みは俺と同じだ。そうだろ?」

「……ちっ」

ニヤニヤ返し。双子だけが未だ意味も解らず付いてこれていない。

私達と自分達の身内を交互に見ている。そんな双子を見て父親はにっこりと美しく微笑んだ。

「葵に棗。お前達だって美人の母親と可愛い妹が欲しいだろう?」

視線だけで私達の方を見ると釣られて双子も私の方を見た。

「美鈴ちゃんが妹になるの?」

「そうだ」

「ずっと僕達と一緒?」

「一日中一緒にいられるぞ」

そう言った瞬間、双子の顔が輝いた。

嬉しそうに私とママの傍に駆け寄り、ママの足に二人が抱き着く。

「えっ?えっ?」

にこぉっと笑った双子からの猛攻撃が開始され、夕食を誘われ、なんと恐ろしいことにその日の内に結婚の約束を取り決められたのだ。

白鳥一家に家まで送って貰い、家へ入るとママは顔を真っ赤にして崩れ落ちてしまった。

焦ってママに【本当に大丈夫なのか?】【結婚してもいいのか?】と【落ち着いて考えてくれ】とも言ったけれど、ママもママで押してくる男性に弱い気質があるので私の抗議、抵抗は無駄に終わった。

ヤバい。イケメンの本気、恐るべし。

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    ……沈黙。 と言うよりは、緊張状態と言った方が正しいのかな? 防具を付けて、美鈴ちゃんと円ちゃんが薙刀を手に対峙している。 今日は美鈴ちゃんが小学生の時から続けている薙刀の練習をすべく、放課後円ちゃんと一緒に剣道部の道場に来ていた。 昔は薙刀部があったらしいけど、今は部員がいなくなった所為でなくなってしまったそうだ。 因みに、愛奈ちゃんは締め切り、夢子ちゃんは補習、桃ちゃんは夢子ちゃんの付き添いで三人共いない。 膠着状態が続いてるなぁ…。 相手の隙を見る為、なんだろうけど…もう20分もこの状況だよ? 忍耐力がものを言うのかな? ……今まで姿勢正してたけど、流石に疲れたから道場の壁に背を預けた。すると…。 「やぁっ!!」 「―――ッ!!」 同時に動き出す。 円ちゃんの突きを躱した美鈴ちゃんが繰り出した一撃が面へと決まった。 勝負あり、かな? 二人は距離をとり、互いに簡略的な礼をして僕の方へ歩いてきた。 動かずにその場で待っていると、二人は僕の前に来て、すとんっと床に座りこんだ。 手早く面を外して床に面を置いたのを確認すると、僕は二人にタオルを渡す。 「ありがとう、優ちゃん」 「サンキュ。優」 「二人共凄い汗だね」 「そりゃそうだよ~。円ってばぜんっぜん隙がないんだもん」 「そりゃアタシのセリフだよ。踏み込むタイミングが全然つかめなかった」 二人は汗を拭いながら言う。けれど何だか楽しそうだ。 「円は本当に凄いね~。剣道やってたのは知ってたけど、薙刀なんて私が言わなければ触る事もなかったんでしょう?」 「そうだね。でもこれやってみたら結構面白いし。剣道と近いものがあるしね」 「あ、そっか。円ちゃん、剣道やってたんだっけ」 二人共会話するのは良いんだけど、水分補給もちゃんとしなきゃ…。 僕は保冷バックからペットボトルを二つ取り出して二人へ手渡す。 「そう言う優は?何もしてないのかい?」 「私?私は…」 特にやっている訳じゃない。訳じゃないけど…。 僕は記憶を呼び起こした。※※※あれは確か小学五年の時だった。 あの時もこうやって美鈴ちゃんが良子様と金山さんに薙刀を習っているのを見守っていた。 (相変わらず白鳥邸の三階って広いよね…。ダンスも踊れるようになってるんだから当然と言えば当然だけど…) 椅子に

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    …辛い…。まさか、こんなにも辛いなんて、思いもしなかった…。「…………い」家に帰ってもお帰りって可愛い笑顔が見れない。「……おい」部屋で勉強してたら、こっそりと覗いてくるあの可愛いほわほわが側にいない。「…おいっ」辛すぎるよ、鈴ちゃんっ!うぅぅ……。鈴ちゃんがいない毎日に泣きそう…。「おいっ!!」バシッ。頭が叩かれた。「…………痛いんだけど?」「こんだけ呼んでるのに気付かないお前が悪いっ」「呼んでくれと頼んだ覚えはないよ」「そりゃそうだ…。って違うわっ!」うるさいなぁ…。ゆっくりとノートから目を離し頭を上げると、そこにはクラスメートの姿があった。………誰くんだっけ?「おまっ!?その表情っ!!小学六年間、中学も三年一緒だった俺の名前、まだ覚えてないとか言わないよなっ!?」…………あぁ、そうだ。田辺だ。「何の用?田口くん」「田辺だってのっ!!」「あれ?そうだっけ?」「おま、おまっ…」「……おい。葵。そうやって田辺を苛めるな。あとが面倒なんだから」あーあ。揶揄ってたのがバレちゃった。って言うか、そもそも。「何の用だったの?」僕が本題に入ると、顔を覆って泣いたふりをしていた田辺がすちゃっと元の態勢に戻り、親指で自分の背後を指し示した。視線を送るとそこには顔を赤らめた女子が一人と、それの付き添いらしき女子が二人。「………はぁ」溜息しか出ない。以前、小学校にいた頃は、僕が鈴ちゃん以外には優しくないって事を知っている人の方が多かったからこんな風に呼び出ししてくる人間は少なかった。それが今じゃ呼び出し放題、言いたい放題。ほんっと溜息しか出ない。「……龍也。代わりに行ってきてよ」「馬鹿言うな。俺だって今呼び出しが終わって戻って来たばっかりだ。これでまた出て行ったら昼飯食いっぱぐれるだろうが」「うん。それでいいと思う」「良いからさっさと行って来いっ。女子の噂は怖いぞ。やつらに酷い対応をしてまわりにまわって美鈴の所まで噂が届いたらどうする」「…………それは、良くないね。分かった。行ってくる」立ち上がって教室の出入り口の方へと向かう。その背後で。「あいつそんなに妹が好きなのか…」「まぁ、仕方ないだろ。それだけ美鈴は良い女だしな」と聞こえてきた。とりあえず後で龍也は殴ろう。彼女達の前に立ち、僕は微笑

  • 乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも、私男性恐怖症なんですけど…。   小話42 愛奈とお昼

    今日は美鈴ちゃんと愛奈ちゃんと僕、三人でお昼。 他の三人は、円ちゃんはクラスで何かあるらしい。夢子ちゃんは先生に呼び出しを受け…って言うか多分補習の相談。桃ちゃんは神薙杏子と話があるそうだ。 生徒会室で三人で美鈴ちゃんが作ったお弁当を食べていると。 愛奈ちゃんが何かを取り出して読み始めた。 「何か見ながら食べるのは消化に悪いよ?」 一応突っ込んでみたけれど。 「うっさいよ、従者」 あっさり切り返された。 「でも実際お行儀が悪いよ?って言うか何見てるの?」 美鈴ちゃんに窘められて、愛奈ちゃんは渋々本を閉じてお弁当の横に置いた。 表紙も何もない本。厚さとしては雑誌よりも薄い? 大きさはB5サイズ、かな? 「……………ねぇ、愛奈?何かすっごく嫌な予感がするんだけど、ちょっとそれ見ても良い?」 「うん。いいよ。これはもう読んだから。読み直してただけだし」 許可を得た美鈴ちゃんはその本を恐る恐る手に取って中をパラパラと見て…静かに本を閉じた。 そんな風にされると中に何が書いてあるのか気になって仕方ないんだけど…。 「愛奈。これは一体誰発行?愛奈じゃないよね?だって愛奈の文章ではないもんね?」 「うん。私じゃないよ。これ発行してるのは文芸部」 「文っ!?…はぁ。おかしいとは思ってたんだよね。文芸部ってそこまで予算ないのにいっつも懐潤ってたし。…これの所為か」 うぅ…気になる…。 「ねぇ、美鈴ちゃん。私にも見せてくれない?」 「………優ちゃん。後悔しないならいいけど…」 「そんな後悔するような内容なの…?」 こくりと美鈴ちゃんが頷く。 一瞬どうしようか迷ったけれど。 それでも好奇心が勝ってしまって、それでもいいから見たいと言うと美鈴ちゃんがその本を渡してくれた。 ペラっと表紙を開くと。 『従者×王子 13』と書いていた。 更に一枚頁を送る。 『「私だって、守りたいのっ!貴女を守りたいのよっ」 「必要ない。分かって。王子…。私は貴女を守るためにここにいるの。この命はその為にあるのよ」 「そんなの嫌よっ!嫌っ!行かないでっ!優兎っ!」』 …………ん? ど、どう言う事かな? 一旦本を閉じて、目をごしごしと擦ってもう一度表紙をめくる。 『「そんなの嫌よっ!嫌っ!行かないでっ!優兎っ!」 「王子…」 「どうして貴女

  • 乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも、私男性恐怖症なんですけど…。   第十四話⑨ ※※※

    ユメを何とか助け出した翌日。 私と優兎くんは寮の入口に立っていた。 それも新しい制服を身に纏って。 「美鈴ちゃん。思い切った事したよね」 「そう?可愛くない?」 くるんと回って私は優兎くんに新しい制服を見せた。 「うん。可愛いよ。可愛いけど、私が言ってるのはそこじゃなくて」 「ふふ。分かってるって。でも、この位しないと、B組や一年の連中を黙らせられないだろう?」 「それは、まぁ、そうだけど…」 仕方ないなぁと笑う優兎くんに私も笑顔を返す。 実は、この制服。私が作った、正しくは製作依頼した、新しい制服だったりする。 この学校のセーラー服は上も下も紺色でスカーフが白。夏服もそれが半そでになるだけ。 なんだけど私と優兎くんが着ているこれは違う。 下は紺色のスカートで変わらないけど、上は白に紺色の襟とスカーフ。そしてスカーフには白でこの学校の校章が描かれている。 「…もう、ユメをあんな目に合わせない為だよ。態と白を多く取り入れたんだ。…皆私の友達だから。手を出すなって牽制の意味もあるの」 「…成程ね。…美鈴ちゃん、まだ怒ってるんだ?」 「当り前。本当ならユメを殴った奴ら全員殴り倒して、歯をへし折ってやりたい位だよ」 「美鈴ちゃん。ちょっと落ち着こうか」 背中をポンポンと叩かれる。 えー、結構落ち着いてるんだけどなー。 これがママだったら問答無用でタコ殴りだよー? とは思ってても、口には出しません。優兎くんに引かれちゃ困るから。 そうこうしてる間に、登校する生徒達が出て来て、私達の姿を見ては驚きながらすれ違っていく。 更に暫く待っていると、 「大変お待たせしましたわ、王子っ」 「王子、お待たせー」 桃と愛奈が現れた。私と同じ姿で。 「二人共似合うね。可愛い」 愛奈の額に、桃の髪にキスを落とすと、二人は耳まで顔を赤く染めて固まった。 「どうしよう…。日に日に美鈴ちゃんのタラシ度がアップしてる」 「ちょっと、優ちゃん。失礼な事言わないでくれるかな。これは私がタラシてる訳じゃなくて、葵お兄ちゃんがたらしてるんだよ。だって私は葵お兄ちゃんの真似してるだけだからね」 「それは絶対違う。違うよ、美鈴ちゃんっ」 ちょっと二人共。なんで優兎くんに同意してんのっ!? これは葵お兄ちゃんの真似をしてるだけなんだってばっ! 葵お

  • 乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも、私男性恐怖症なんですけど…。   第十四話⑧ ※※※(桃視点)

    「ね、ねぇ、白鳥さん?」 「なぁにー?夢子ちゃん」 「わ、私なんかが、白鳥さんの部屋に来ちゃっていいのかな」 「良いに決まってるでしょ。さ、入って入って」 躊躇う一之瀬様を白鳥様がその腕を引っ張り問答無用で部屋の中へ連れ込む。 その後ろを私と向井様が笑いながらついて行く。 リビングには既に花島様と新田様が既にいらっしゃり、お茶会の準備がされていた。 「夢子ちゃんはこっちねっ。専用の林檎クッション作っといたからっ」 「か、可愛い…」 あぁ、最近白鳥様がせっせと何を作っているのかと思ったら、クッションでしたのね。 私にも作って下さいましたが、これが物凄く触り心地が良くてびっくりですの。因みに私のは桃の形をしていましたわ。 円形のテーブルに各々座り、用意された紅茶を一口含む。 「さて、落ち着いた所で。美鈴ちゃん。全部説明してくれるよねっ」 あらあら?花島様のお顔が怖いですわ。 白鳥様が凄く引いてますもの。でも白鳥様も説明する気はあるのか、一応頷いている。 けれど、いけませんね。姉の事ならば妹の私が説明するのが道理ですわね。 「私が説明致しますわ。姉の事も含めて」 私は白鳥様との出会いを思い出しながら、口を開いた。数日前までの私は、死人と変わらない、ただ呼吸をするだけの存在でした。 姉が脱走した事により、綾小路家の跡継ぎとしてやらねばならぬ責務が全て圧し掛かって来ました。それでも私は何とかその責務を全うしようと努力をしてきたものの、無理無茶が祟り体調を崩す事が多くなってしまいました。 病気がちになり、家の者は私を安静にさせようと屋敷の離れへと隔離した。 …そんなの建前だって私は知っていました。 姉が脱走し、私にまで脱走されたら困ると、本来行く筈だった聖カサブランカ女学院へ通わせる事もせず、余計な知識をつけないようにと私を離れへ閉じ込め外界との繋がりを断ち切らせた。 こんなの言葉を柔らかくしているだけで、監禁となんら変わりない。 部屋に籠らされ、何をする訳でもなく過ぎて行く日々。 誰と話す事もなく、ただ…ベッドの上で外を眺めるだけの生活。 (このまま、死んでいくのかしら…?だとしたら、私は何のために…) 何のために、この世に生まれたのだろう。 ぼんやりと遠くを見つめ

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